研究テーマ3:遺伝子発現の光操作技術の開発


 

光作動性のイオンチャネルやイオントランスポーターを使用したいわゆるオプトジェネティクス(光遺伝学)の興隆は、近年の神経科学研究の最大のブレイクスルーと言ってもよい。光を照射する領域やパターンを変える事で、目的のニューロンの発火・抑制を自在にコントロールする事が可能になった。実際に、オプトジェネティクスの適応により、神経回路の動作原理の解明が次々と進んでいる。遺伝子発現についても、高い空間分解能・時間分解能にてコントロールするには、光を用いた手法が有望であると考えられる。脳神経系の発生・発達過程や、成体脳の神経回路の可塑性・恒常性維持の制御において、遺伝子発現が関与した事例は数多く知られている。光照射の有無や条件により、遺伝子発現を自在にコントロールすることで、様々な遺伝子の機能や、その発現動態の意義について、より詳細な解析が可能になると期待される。このような背景から、我々は遺伝子発現の光操作の技術の開発を行っている。光作動性転写因子の新規開発に加えて、光照射デバイスや、生体組織への光デリバーリーの開発を行っている。

 

代表的な論文:


● 青色光で制御できるTetシステムについて

Yamada, M.Suzuki, Y.Nagasaki, S., Okuno, H. and *Imayoshi, I. (2018) Light-inducible Tet-gene expression system in mammalian cells. Cell Reports25, 487-500. [PDF] 

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青色光で制御できるTetシステムの開発を行いました。青色光依存的な二量体形成モジュールであるCry2-CIB1系を用いることで、Tetシステムを光とDoxで制御できるようになりました。これまでの遺伝子発現制御の手法では困難であったような複雑な遺伝子発現のパターンの創出や、狙った細胞だけに光を照射して遺伝子発現を人工的に操作することが可能になりました。今後は生体内での応用を目指します。


● 青色光で制御できるGal4-UASシステムについて

Yamada, M.Nagasaki, C.S., Suzuki, Y., Hirano, Y. and *Imayoshi, I. (2020) Optimization of light-inducible Gal4/UAS gene expression system in mammalian cells. iScience, 23, 101506, September 25, 2020. https://doi.org/10.1016/j.isci.2020.101506 [PDF]

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